今回、合同ステージで演奏する「運命の女神の歌」は、戦争に向かう父によって女神への生贄にささげられた王女の嘆きを描いたものです。人類を支配し自由に操る神々の力に対する畏敬の念とそれに抗えない無力感を、ブラームスはしかしこの曲の後半で慰めに満ちた音調へと変容させます。 今回すべてのステージで図らずも今を生きる者が歌を通して語るべき楽曲が集められました。言葉やペンが巨大な力に抵抗するのと同じように、私たちには合唱という武器があります。ブラームスはこの曲の中で、不条理な現実に対してもその揺るぎない音楽の力が人間愛を語れることを示しました。 いつの世も人々の心が平安を希求し、歌うことによってそれが共鳴し合うのだということを信じて、若い仲間とともに今できる精一杯の演奏をしたいと思います。
2022年7月10日(日) 合同ステージ指揮者 上西一郎
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