世界規模で人の動きが制限され、地球はまるで呼吸を忘れてしまったかのような閉塞感に覆い尽くされています。生きることを優先するために多くの「当たり前」を我慢する空気が支配する中で、合唱活動への風当たりは想像以上に厳しいものとなってしまっています。 クール シェンヌの活動は5月のオンライン練習から再開しました。今年、何人かの団員が去りましたが、また新しい仲間もたくさん増えました。遠くから毎週練習に参加してくれる団員。参加したくても叶わずリモートで熱心に練習見学してくれている団員。それぞれが限られた活動の中で今できることを必死で探し求めてきました。 ある合唱団で「歌う意味を見失った」という言葉を残して合唱から遠ざかった人がいました。合唱が趣味としての活動である以上、生きる上での優先順位は確かに上位ではないかもしれません。心や生活に余裕があるときに歌えばいいという考え方もあると思います。 しかし過去のパンデミックや大戦など、世界が大きな悲しみに沈んでも人は歌うことをやめませんでした。私たちはその歴史に勇気づけられて今日も歌うことができるのです。芸術は決して滅んだりしません。人間が人間らしく生きたいと願い続けるかぎりその傍らに必ず寄り添ってくれています。たとえ世の中の価値観が変質しても、明日にこの音楽をつなぎたい。今日はそんな私たちのささやかな決意を名曲の演奏を通して語ることができれば嬉しく思います。 本日のご来場に感謝申し上げ、精一杯の演奏でお応えしたいと思います。
2020年12月27日(日) クール シェンヌ主宰・音楽監督 上西一郎
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