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[81]第17回演奏会パンフレット挨拶文(2019/05/13 23:09:21)
 今回で私たちの演奏会は17度目を迎えました。
 これまで支えてきてくださった多くの方々に本日の演奏をもって感謝をお伝えできる幸せを噛み締めています。しかし見方を変えよくよくかんがえてみれば創団37年のうち20年は独自に発表する機会を持たなかったことになります。コンクールだけに集中した年もありました。演奏会を開きたくても明らかにその演奏体力が不足していて断念したこともありました。でもどんなときも私たちはその歩みを止めることなく今日まで歌い続けました。
 今回の選曲を悩んでいた時、ふと思い立って私がこれまでに演奏してきた曲の数を数えてみました。もはや正確にはカウントすることは出来ませんでしたが、概ね700から800曲程度だと思います。そのうち半数以上はシェンヌで演奏したものです。しかしその全てを歌った団員は一人も残っていません。演奏する曲の難易度がもたらす技術的な障壁を克服し、その音楽的な高みを目指し続けてこられたのは、単なる年月の堆積の産物などではなく、これまで取り組んだ数百の音楽の力と対峙する演奏姿勢の質によるものだと確信しています。そしてそれは200人を超える団員の入れ替わりの上でも変質することなく根付いてくれました。
 今回は心から信頼し尊敬する二人のピアニストをお迎えし、全ての曲で共演します。圧倒的な存在感を持つ楽曲に取り組む中、優れたピアニズムとの交わりは私たちに多くの示唆を与え、表現の可能性を押し広げてくれます。スマートフォンで簡単に世界中の演奏が聴ける今日、ブラームスの時代と何も変わらない「楽譜」だけと向き合い、数多の曲から学び、私たちの中に蓄えられた「経験のことば」で三人の大作曲家の音楽を語りたいと思います。

2019年5月11日(土)
主宰・音楽監督 上西一郎

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